オートクチュール仕立て ソワ・ド・リヨンのお話
フランスアンティーク絹織物のセットアップ 

布が大好きな方でしたら、思わずため息が出てしまうような美しいアンティークの絹織物。

漆黒の地に青い鳥、花籠のような薔薇の枝とリボンが織り込まれた生地から、ブラウスとスカートのセットアップを仕立てさせていただきました。

この素晴らしい布地は、ソワ・ド・リヨン
1900年〜1920年頃のフランス、絹と織物の街リヨンで作られた絹織物です。
リヨンの織物は、高度な技術と芸術性で多くの王族や貴族に愛されてきたという歴史があり、かの有名な王妃マリーアントワネットや、彼女のおかげで国の財政が傾いたと言われるナポレオンの妻ジョセフィーヌのドレス、あの豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿の装飾にも使われ、後には世界のオートクチュールメゾンのもの作りを支えて来た事で有名です。

100年前の古い機械でゆっくり織られたこの布は、
私が今まで見た事がないほどの細い糸がしっかりと織り込まれ、しなやかで柔らかでありながら、ほどんどしわにならないほどの張り感を持った素晴らしい生地でした。
図案の美しさと繊細さも見事というほかありません。
もしここまで美しい布地が他にあるとしたら、考えられるのは昔の日本の着物でしょうか。色々な布を見て来ましたが、やはり日本の着物の布は世界一です♪

思わず、長年にわたってクチュール縫製を教えていただいてきた大先生のところへ生地を持って訪ねてしまいました。
すると一言、「これはすごいわねー 今の生地ではないわよね。軽くて薄いのにしわにならないでしょう?」

さすが先生、おっしゃる通りでございます。

時間と手をかけるという目に見えない物が、こんなにはっきりと形になって現れているので、「かんじんなことは、目に見えないんだよ。」という星の王子様の名言に、「でも、ほんとうは見えるんだけどね。」と付け加えたい気持ちになりました。


まるで100年前の、このお姫様のような生地。
姫君ににふさわしい仕立てをしなくては。と今までの経験を総動員して制作をさせて頂きました。
まずは仕立て上がった時に、細かい柄が美しく揃うよう、丁寧に地直しをして布目を通して印をつけるところから。
どんなことも、見えない下準備で価値が決まりますよね。

セットアップのデザインは、雑誌の中から探していただいたこちらのイメージ。

このデザインをもとに、型紙を起こし、
仮縫い用の布でトワルを作成して、1回目のフィッティングをしていただきます。
お似合いになる着丈やきれいに見える肩幅、ウエストのフィット具合の好み、
襟ぐりの落ち着き、全体のバランスなど、
採寸したサイズだけではわからない、細かなところを仮縫いで調整していきます。
その方にぴったりのドレスになりますように、という想いを込めて。

調整したトワルをもとに型紙を直し、次は本生地でも仮縫いをします。
実際のシルエットやフィット具合、イメージは本生地でないとわかりませんものね。

青い鳥と花籠が美しいシンメトリーに並ぶように、慎重に慎重に裁断して印をつけて手縫いで仕立てます。
ここから、納得いくまで仮縫いで作り上げ、ようやく本縫いに入ります。

使用するボタンもアンティーク。
パット・ド・ヴェールと言われるガラスのボタンです。
シックでありながら、光を受けるときらりと光る華やかさ、同じ時代の物なので、雰囲気がぴったりですよね。

切り替えに入っていたギャザーはなくして、ダーツ処理に変更しました。
この生地は、緻密な模様が命。
切り替え部分も、柄はすべてぴったり合うように設計します。

斜めの切り替え線で柄が合わないところは、自然につながっていくような模様の位置を探します。

細い糸で目が詰まった織物にミシンの針を落とすのは、実は最も難しい縫製です。
縫いつれが起きないように、ずれないように、
お姫様の機嫌を損ねないように最新の注意を払って、忠実なしもべのごとく気が抜けません。


そして仕上がったセットアップはこちら。
デザインは同じですが、お客様に一番お似合いになるバランスに仕上げています。

このシルクのつややかさ!
光を受けた時の輝き、影になっている部分の深い色合いも、どちらも美しくて見とれてしまいます。
これを、お召しになられて動いた時の美しさを想像すると、、、
もう〜胸がドキドキしてしまいませんか?

いにしえの人々が丹誠込めて織った絹の織物は、100年を超えても色あせる事なく、人の手と自然が作り出す美しさと、時間が作り出す不思議な力をたたえて、
感動と、その声を聞く気持ちで向かわないと受け入れてもらえない事など、多くを教えてくれました。

最初、スカートをお考えだったところから始まって、生地を見ながらデザインやこだわりについてお話させていただき、
お客様とご一緒に作らせていただいたお洋服。
私は、自分の「好き」を大切にしていますが、他の方の「好き」をお聞きするのも大〜好き。素敵なお仕事をさせていただき本当に幸せでした。
ファストファッションも良いですけれど、自分の為に作られて行く課程が見えるお洋服は、宝物みたいに特別な存在になりますよね。

先日はお召し頂いて、着心地が良かったとうれしいご連絡をいただきました。
いつも、とても幸せに思う瞬間。
またこの経験を、これからのもの作りにつなげて行きたいと思います。

この素敵な生地が気になった方は、こちらもご覧になってみてください。

「パァジュ・ド・マリールイーズ」

このお店は、フランスをはじめ、ヨーロッパのアンティークジュエリーやオブジェ、レースなどをパリからフランス価格でお届けしている サロンです。
セレクトしているのは、パリ在住の大変美しいデザイナーの女性。
彼女が丁寧に丁寧に選び抜いたお品は、どれも一見の価値ありですよ。
心ときめく素敵な布もいろいろありますので、
ご自分のために何か素敵なものをお作りになってみるのはいかがでしょう♪

 

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