ミューズの小さながま口2


イメージを、革とテキスタイルで表現するクリエイティブシリーズ「ミューズの小さながま口」。 前回のブログの続編です。
今回は憧れの女流作家、そして男性のミューズも登場します。
いつものブログより長めになってしまいましたけれど、ご覧いただけたらうれしいです♪

「Mari」

(◆出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 )

森鴎外の長女、森茉莉。「日本最後の幻想作家」と言われ、少女のような眼でとらえた世界を、夢見るような文章で綴ったエッセイがとても好き。特に父・鴎外の事を書いた文章は、溢れるほどの愛情に満ちていて、何度読んでも幸せと切なさが混ざった複雑な気持ちになってしまいます。

良き時代の耽美な世界を思わせる茉莉さんは、革は優しいシボのあるゴートレザーで、高貴な藤色と若草色の組み合わせ。インナーには大正ロマン的な鹿の子模様の大きな花が染められたヴィンテージ着物を選んでみました。


小さな私の日々は・・・
帰るだらう父を待ち、母を恋して暮らした。
長い、長い幸福な日々だった。 <森茉莉 幼い日々より>

「Aya」

こちらも文豪のお嬢様、幸田露伴の次女幸田文がミューズです。人、植物、動物、どんなものにも同じ姿勢で向き合い、そこに潜む小さな輝きを見つけ出す感受性と、天性の明るさ、切れ味のよい文章が魅力の作家です。

自伝的な本が多く、早くに母親を亡くし、非凡な父のもとで家事一切をまかされたという生い立ちが、どの文章の底辺にも流れています。父・露伴の教育は独特で、大人の私が読んでも頭を抱えるような難題ばかり次々出される毎日。奮闘しながら、でもまっすぐっすぐに成長していく彼女の様子に引き込まれます。

父譲りの粋な感性と、まっしぐらな明るさを持つ彼女のイメージは、日本の色である藍色とお日様の色の組み合わせ。インナーは、五重塔の風景が描かれた銘仙です。なぜ五重塔かと言いますと、小説「五重塔」は露伴の代表作。それが縁で幸田文は後年、落雷によって焼失した奈良法輪寺の三重塔の再建に奔走する事になり、その時のまっしぐらな様子は彼女の人生そのものでした。

読了後、そこはかとないおかしみと爽やかさが残る彼女の世界。とても面白くてほがらか、なのに一筋縄ではいかないところに憧れます。

「Take」

大好きな男性アーティストをミューズとしたがま口も作ってみました。
こちらは童画のパイオニア武井武雄。彼の絵を初めて見たのは、子供の頃。毎月届くのが楽しみだった月刊絵本キンダーブック。薄い本で、自分用の本箱(リンゴ箱に包装紙を貼ったもの)に並べて毎日見ていました。
大人になって再び作品に出会った時、そのモダンで大胆な構図と、いきいきと描かれた面白さ、素晴らしさに驚愕!ここまですごい絵だったとは気づかなかった~~~

それから、緻密で創造的に描かれた彼の世界に魅了され、作品を追いかける日々。
版画や製本、おもちゃの制作、すべてが美術品なんですよ。こんな魔法使いみたいな人って、私は他に知りません。ピカソ? いえいえやっぱり武井武雄が素敵でしょう?
そして、私が作品の中で特別素敵に思ったのが木版画。木を一堀り一堀り慎重に彫って。インクをのせて、ばれんで刷って作る版画の線は優しくて、童画作家だからこそ表現できる可愛さとユーモアにあふれていてたまらないのです。

そんな版画作品のイメージはブラウンの型押し革です。インナーには青い紫陽花が描かれた銘仙を。武井武雄の本に「青の魔法」という詩があります。

「青の魔法をかけられて   昔の空は青かった。

青の魔法をかけられて   昔の海も青かった。」

青い色も、赤い色も、黄色い色も、みんなきれいな色の魔法にかかっていると思ったら、世界はまるでおとぎ話のようですよね。それから、夏になると咲く青い紫陽花を、青い魔法にかかっていると思って眺める私になりました。

「Dali」

じゃーん、サルバドール・ダリです。 大人になってからは大好きな画家になりましたが、子供の頃、美術全集のダリとムンクだけは怖い、のに見てしまう。という恐ろしいページでした。
ダリは悪夢のような作品の印象が強いですけれど、2016年に国立美術館で開催された展覧会で、シンプルで可愛らしい初期作品、ファッションデザイン、宝飾品、映像作品やグラフィックデザインなどを見て、そのイメージが変わりました。どれだけ怖い人なのかと思ったら、実際は悲しみや苦しみを抱え、一人の女性をずっと愛した天才だったのですね。

ダリの作品は、実際にはブルーや金色など美しい色がたくさん使われているのですが、私のイメージは赤と黒と白。つややかな黒の牛革と深紅の組み合わせに、インナーにはグラフィックアートのような赤黒の銘仙を使いました。

どころで、ダリの絵っていろんなものが宙に浮いている感じじゃないですか?
なので、ダリがま口には、丸が浮かんだ抽象的な赤黒チャームをつけてみました。

もの作りは、イメージがあって初めて形にする事が出来る。

今回はいつもと違う切り口で、イメージからもの作りをして行く様子をご覧いただきましたけれど、お客様からオーダーをいただいた時は、お会いしたり、お話も聞かせて頂くので、もっともっとイメージをふくらませて大切に作らせていただいています。 バッグも革小物もその方の一部になれるような物を作りたいと思っています。

また、そちらのストーリーも楽しみにしてくださいね。

長らくお読みいただきまして、ありがとうございました。

気がつけば日増しに寒さも厳しくなり、師走の空気が漂っておりますね。
みなさま、みかんを食べてビタミンCを取って、風邪などひかれませんように。

華やかな12月、楽しんでお過ごしください♪

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