楽しみに、楽しみにしていた、「ニューヨークが生んだ伝説　写真家　ソール・ライター展」を見に、渋谷のBunkamura　ザ・ミュージアムへ行って来ました。

展示されていたのは、ファッション写真、モノクロ写真、カラー写真、絵画作品など200点以上。初めて見た絵画作品の世界も、大判で丁寧にプリントされた写真作品も、一枚一枚じっと見入ってしまうような美しさ。
そして、彼の言葉とともに作品を見ていくと、温かい気持ちにもなる展示会でした。

「写真を見る人への写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時々提示することだ。」

売れない画家だったソール・ライターは、生活のために雑誌の写真を撮るようになったそうなのですが、そのせいか、彼のファッション写真は絵画のように美しくて自然です。

美しいモデルさんが、素敵なドレスを着てジュエリーをつけ、完璧なメイクでそこにいるのに、いわゆるキメた写真ではない、ふっと力を抜いた瞬間のような優しい雰囲気の写真ばかり。普通なら見逃してしまうような一瞬を切り取っています。
そんな魅力的な写真は、写っているものすべてをこんなにも生き生きとさせるものなのですね。

「私が望んだのは、撮影の結果がファッション写真以上の”写真”になることだった。」

この一瞬の写真　写真家からの驚きの贈り物です。

「見るものすべてが写真になる」

展示会の中で、一番お気に入りだった作品は、「Canopy (天蓋)」でした。
葛飾北斎や歌川広重が好きで、浮世絵の大胆な構図を取り入れているといわれている作品です。
評判では、広重の「名所江戸百景」のイメージだといわれているようですが、

私は、なぜか河鍋暁斎の「雨中さぎ」が浮かんでしまいました。
黒と白のバランス、そぎ落とされた画面、ユーモアあり、侘び寂びもあり、いつも何か面白いものやきれいなものを探しているような眼差しを感じるところなど。
河鍋暁斎も見るものすべてを絵にした人なので、どこかに共通点があるのかもしれません。

絵と言えば、今回は、カラー写真のパイオニアと呼ばれているソール・ライターの絵画作品もたくさん見る事が出来ました。
その絵の色彩の美しさは、驚きというか、納得というか、写真も確かに美しいのですが、毎日書いていたという小さな絵こそ彼そのものに見えました。

きっと、毎日、毎日、世界を眺めながら美しい色を探していたのでしょうね。
そして、美しい色を発見したら、それを写真にも撮ったし、絵にも描いた。

「神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はない。」

急いでいたら見落としてしまうような、一瞬だけ起きる魔法を見逃がしたくなくて、誰よりも街を見ていたのかもしれません。

「私にとって写真は発見すること。　絵は創造すること。」

これは、展覧会の最後に見たショートフィルムの中で特に心に残った言葉でした。

学生時代、父のフィルムカメラで、初めて写真を撮るようになった私は、写真を撮ろうとすると、目の前の「美しさ」を一生懸命探さなくてはいけない事に気づきました。

その頃、東京に出てきたばかりで、ホームシックというフィルターが全身にかかっていたのもあり、楽しさや美しさなどどこにも見つけられないような暗～い私だったのですが、なんとか見つけようとしていると、「あ！日常の中にこんなに美しい瞬間があったんだ！」とうれしくなったりして、少しずつ元気が出てきた事を思い出しました。
今思えばそれは、自分の力で日常の中に小さな幸せを見つける事ができるか、ということでもあったのですね。

その時に撮った写真はほとんどが失敗でしたけれど、美しいものを発見したい！写真に撮りたい！と思う気持ちは今も変わりません。

赤い傘をたくさん写していたソール・ライター、
お天気の悪い日の赤い傘って、本当にきれいな色ですね。すごいセンス。
美しさや、輝きは、どこにでもあると教えられている気がします。

私の仕事は写真ではありませんけれど、
こんなふうに美しさを発見して、再構築して、伝えられるような形にできたらとしみじみ思ってしまいました。
それには、やはり毎日作り続けること、手を動かし続けることですね。
もっと生み出し続けなくては！

「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」

彼のキュートな笑顔。
たくさんの素敵な女性に囲まれていたのもうなずけますよね。

最後に写りこみの記念写真を撮りました♪