茶入れのイメージで作る、コウモリのオーダーメイド二つ折り財布

 

「茶入れ」
読んで字のごとく、茶道でお茶を入れておく入れ物。

コンパクトで、大切な物を入れておく、地味だけどみどころ満載の貴重なアイテム。
そんな「茶入れ」をイメージとした、お財布を作らせて頂きました。

(参照サイト:徳望庵)

茶の湯で濃茶(こいちゃ)に使う抹茶を入れる茶入れは、こんな感じ。
主に陶器で象牙の蓋があり、名物裂で仕立てた仕覆(しふく)を着ています。

茶道をされていない方も、映画などのお茶の場面で、
お道具拝見のシーンを見た事があるかと思いますが、
「茶入れ」というのは、拝見物の中でも主格の道具とされていて、
特別に大切な存在なのだそうです。

このお財布をご依頼いただいたのは、4年前にお仕事用の鞄を作らせて頂いたこともあるF氏でした。

歴史のお仕事をされていて、生き字引のようになんでもご存知な上に、超がつくほどお話上手。
お会いすると教えて頂く事ばかりなのですが、お話が面白すぎて、ご一緒していると時間の過ぎるのが早い、早い。

なるほど、
その方のお財布が茶入れだったら、鞄はなに? と思いましたか?

男は敷居を跨げば七人の敵あり。

仕事の鞄は、戦うための刀を入れる鞘のイメージというリクエストだったんです。

でも、刀の鞘って、わかりませんよね。

なので、ものすご~く調べました。

そうしたら、どうでしょう。
とてつもなく美しいものではありませんか! Σ(・□・;)

この圧倒的に美しい鞘のイメージから、ふつふつとわいてきたのは、
本体の色は黒、
さらに、当時刀の鞘の拵えとして珍重されていた「鉄刀木」の独特な縞模様を思わせる革と、漆塗りを思わせる革、素材違いの2種類を組み合わせたスマートな鞄。

内側は朱色で、お守りのヤモリちゃんが住んでいて、

金具の色は銀。
出張の時にはトランクに鞄が入れやすいように、持ち手が取り外せる臨機応変なデザインにして、最後の仕上げに、持ち手に平紐の下げ緒を結びました。

今回のご依頼で、このバッグに再会できたのですが、とても大切に使っていただいていて、ヤモリも元気で(涙)、うれしくて胸がいっぱいになりました。

という訳で、このお財布は、備前の茶入れをイメージした、サラサラした手触りの茶色の革、最初からアンティーク調なイメージの渋い吟スリ革を使いました。

開くと、この配色。

札口だけに象牙色の革を使っています。

お財布を閉じていても、象牙色はチラ見え。

そして、中にはもちろんきれいな色のお茶が入っています。

小銭入れの後ろには隠しポケットがあって、

ここには、幸運を呼ぶと言われるコウモリちゃんが住んでいます。

このコウモリは、象牙の根付のイメージから作りました。

仕覆もなくては「茶入れ」が泣いちゃいますので、

あ、上等な茶入れは、仕覆の着替えを何枚も持っているんだそうですよ。
「茶入れ」はこう見えて、おしゃれさんなんです。

ただ、お財布にぴったりの仕覆では、何かと使いづらいと思いましたので、
男性も持てる和のハンドバッグ、「信玄袋」を作ってお入れしました。
素材は、正倉院模様の古布の帯地に、お財布とお揃いの革。

今回も、最初のインスピレーションから、プロセスを楽しみながら、ときめきながら、制作する醍醐味を味わわせていただき、心から感謝しております。

私はものを作るのが好きですけれど、実はこうして、どんどんストーリーをふくらませて、イメージしているところへ向かって行くのが好きなのかもしれないって、最近思います。

最初は、そのイメージしているところへなかなか行けなかった。
でも、ずっと続けていると、少しずつ、持っていけるようになって、
どんどん楽しくなっている気がします。

作る事の素敵さは、
自分や、大切な人にとってのときめきと幸せに向かって進んで行けること。
そんな風に思えた大切な時間でした。
ありがとうございました。

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