その色と形に癒される 画家 熊谷守一
絵を見るのは好きですか。
お好きな画家はありますか?
私は、最近知ったこの塗り絵のような絵を書く画家が大好きです。
熊谷守一という人をご存知でしょうか。
私は好きで絵を描いているのではないんです。
絵を描くより遊んでいるのが、いちばん楽しいんです。
石ころひとつ見ていても全く飽きることがありません。
絵を描くより遊んでいるのが一番好き。と自宅の庭で虫や花を見つめて暮らした、仙人のような風貌の日本の画家です。
私は、本を読むのが好きなので、気分転換に図書館で知らないジャンルの本の棚を探検します。知らない国、知らない時代、知らない建築や医療の世界、ジャーナリズム、書、骨董、動物、児童書・・・それで、ある日「蒼蝿」と大きく書かれた装丁の、その文字に惹かれて借りてきた本で、彼の人生と彼の絵に出会いました。
驚きました~
これが、ミスター蒼蠅の絵?
彼の人生は、確かにミスター蒼蝿らしく、ここには書ききれない程複雑でしたが、絵は見慣れた花や樹木を単純な線で描いて、塗り絵のように色を塗ってあるシンプルな絵。なのに目が離せないくらいの魅力があって、毎日見ていたいと思いました。
シンプルな形と色彩がなぜこんなに魅力的なのでしょう。色使いはそのまま図案にしたいほど、どの絵を見てもすべて好きでした。
調べてみると、彼が45年間住んでいた豊島区の家が、小さな美術館になっているのがわかったので、行ってみました。
美術館の壁画は、いつまでも眺めていたくなるようなアリの絵。近所に住んでいたら毎日この道を通ってしまいそうです。
入り口には、いねむりしている熊谷氏。
熊谷氏は、明治37年に東京美術学校を首席で卒業し、画家としての将来を期待されながらも画家にはならず、調査団に加わって樺太に渡るというようなことをしてしまったり、故郷で筏流しをしたり、働かないで極貧生活を送ったりして長年暮らします。
還暦に近くなった頃から、ようやく本格的に日本画を書くようになって、晩年に、私が驚いた小宇宙を線と面で描いて、色を平塗りする技法(守一式)で絵を書くようになったとか。
彼の人生を読んでみれば、二度目、三度目のびっくり。
美術館には、塗り絵風になる前の作品もあり、そちらも彼らしいイメージで書かれた作品ばかりで、見いってしまう魅力がありました。特に奥様を描いた(描いた時は人の奥様だったような?)作品は首筋がすうっとするほどでしたよ。
猫好きで、猫だけの画集もあるそうです。
虫も好き、鳥も好きで、ものすごい数の鳥を飼っていたようです。餌やりだけで半日が終わるほど。。。
固まりでとらえた桜の花の並木。
この、柚子とはさみの絵は特に好き。
茶色のウールの横長バッグに、この図案のアップリケをしたいです。
どの絵も、どの絵も、いとおしくて、不思議なことに、一度見たら忘れられないんです。私なんて、名画と言われる絵を見ても結構忘れてしまうのに・・・(笑)
絵を描いていない長~い時間も、自然を見つめて、心の中に絵を描いていて、それがこの形と色になって画面に現れたのでしょうか?
身近にある、可愛い小さなものを描いているのに、この力強さ!
究極にシンプルなのに目が離せなくなるような深さ。
人間の手は、脳が外に形となって現れたものだと言った人があるけれど、熊谷氏の手ってどんなだったのかしら?と思ってしまいました。
美術館の帰りに来年のカレンダーを買ったので、毎日彼の絵を眺めるつもりです。
最後に、12月1日から東京国立美術館で、 「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」が開催されるそうです。
きっと抱きしめたくなるほどの素敵な絵がいっぱいですよ。
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