フランス人間国宝展 15人の匠の技と美学

美の国フランスの、人間国宝(メートル・ダール(Maître d’Art))の手から生まれた華麗な作品を体感できる「フランス人間国宝展」へ行ってきました。

フランス人間国宝展は、日本人の作った洋風建築の極みとも言われる東京国立博物館 表慶館で、中世からの宮廷文化によって、華麗な技術が発達してきたフランスの伝統工芸の今を、限りなく間近で見る事のできる展覧会

私は今回の展覧会まで、フランスに人間国宝がある事を知らなかったのですが、メートル・ダールは、日本の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定にならって、1994年にフランスで創設された称号なのだそうです。なんだか意外ですよねー

そして、メートル・ダールに認定された職人は、伝統文化の保護に務めるだけなく、技を未来に伝え、ものづくりの革新に貢献する事が使命となり、3年のあいだ弟子を取って後継者を育成することが義務付けられていると知ってまたまた驚きました。
国をあげて美しい手仕事を大切に残していくなんて、さすが芸術大国フランス、その制度まで美しい〜

展示されているのは、15人の工芸作家による傑作、約230点。
15のカテゴリーそれぞれの美しさを見る事ができて、一部屋ごとに驚きと感動があります。

人間国宝の作品って、研ぎ澄まされていて近寄りがたいほどすごいに違いない。というイメージがありますけれど(私だけ?)、この展覧会では、どの作品も伝統的で古典的な手作業の技法を使いながら、作品は革新・挑戦という言葉がぴったりで、明るく楽しく、近寄りがたいというよりもウエルカムな感じ。非常に研ぎ澄まされているのに、あたたかいのは一体なぜかしら?
まず最初のお部屋、ジャン・ジレルさんの陶器の展示から優しくて不思議な空間なのでした。

15人の中には革職人の方もいらっしゃいました。
元エルメスの工房職人で、現在はビスポーク(顧客と話し合いながら作ること)の革職人セルジュ・アモルソ(SergeAmoruso)さん。手がけるのはバッグから財布、家具やエレベーターの内装まで、無類の一級品を作る方だそうです。時々、日本でもビスポークオーダー会を行なっているようですよ。
今回は、ピラミッドからインスピレーションを得たというバッグが、トカゲ、クロコダイル、オーストリッチ革など、素材違いでいくつも並んでいました。なだらかな曲線と全体のバランスの品の良さがとにかく美しいバッグ。私は、全体よりも細かいコバ仕上げだとか、ステッチの裏側とか、型紙はどうなってるんだろう?なんて事が、次々と気になってしまい、ガラスも何もない所にポンと置いてあるのを良いことに、極限まで近づいて鑑賞してしまいました。

エルメスみたいですが、独特の彼のカラーがあって、有名ブランドではなく、どこにもない物が欲しい。というセレブリティに人気があるのがよくわかります。

はぁー・・・・ため息。。。

彼を取材した動画(フランス語)がありました。
素敵な方ですね〜 言っていることはわかりませんが、クロコダイルがお好きなご様子。革は包丁ではなくカッターで切っていますよ(笑) 動画に出てくるお財布に持ち手がついたようなデザインの小さなバッグが作ってみたいなぁ。

中でも一番好きだった展示は、子供の頃から傘が好きで、古い傘を蘇らせるのが趣味だったという

ミシェル・ウルトー(Michel Heurtault )さんの傘

でした。
あぁ 傘がこんなに素敵だなんて知らなかった・・・
またもや隅々まで目を皿のようにして、傘の内側に入ったり外側に回ったしりて鑑賞。
素材も!配色も! そして特に持ち手の素敵さときたら。どの傘も、裏側まで美しい布、骨も美しい布で巻いてあります。 一体どうやって??? って細かく縫い付けるに違いないですけれど、愛がなくては絶対にここまで出来ません。

傘大好き少年だった彼ですが、そのまま傘職人になった訳ではなく、映画や演劇、オートクチュールの華麗なコスチュームを手がける衣装係として25年間活躍し、得意のコルセット使い(やっぱり骨を入れる物が上手だったのですね。)で、業界内でも確固たる地位を築いたそうです。彼の作る傘は、こうして服飾史も、生地の知識も、縫製技術も叩き込んだ後、最も好きだった傘を作るようになったという彼の人生そのもの。

彼のアトリエの動画です。(フランス語)
オートクチュールドレスのような傘。

Heurtault Parasolerie Paris  ←こちらのサイトでも見られます。
でも、しびれるほど美しいのはやはり実物ですよ。

他にも、ポップアップする扇を作るシルヴァン・ル・グエンさん。
砂漠の星空かと思うような曜変天目の器を作るジャン・ジレルさん。
羽を使って作ったお花が生きているように見える羽細工のネリー・ソニエさん。
壁紙も、麦わら細工も、べっ甲細工も、どなたの作品も本当に見応えがありました。

リラックスして楽しめて、帰り道にはあたたかく豊かな気持ちになれる展覧会、美しい物がお好きな方、美しい物を作りたいと願う全ての方におすすめの展覧会です。
お隣の「運慶展」は行列でしたが、こちらはゆったりとした素敵な秋の一日を過ごせるはず。そうそう、行かれた方は、工房で撮影された制作のドキュメンタリー映像もぜひお見逃しなく。

さて、人間国宝ではありませんが、布と革の作家である私と一緒に革小物を作るワークショップがただいま参加者募集中です。
少人数制ですので、初心者の方も大歓迎♪ 自分だけのこだわりの作品を仕上げる楽しさを、ぜひ体感しにおいでくださいね。詳しくは下記のリンクをご覧ください。

「持ち歩きたくなるバイカラーのレザーブックカバー」

「ミシンで作る贅沢な革のがま口ポーチ」

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