お財布制作 1mmの向こう岸
どんなお財布でも作れるようになりたいです。
これは、お財布の基本「札入れ」と「束入れ」。
この呼び方はどちらかというと業界用語で、私も最近知りました。お札を折って入れるのが「札入れ」で、折らないで入れるのが「束入れ」。一般的には「二つ折り財布」と「長財布」と言いますよね。
この頃、ファスナーのついたラウンド型のお財布やミニ財布が流行っていますけれど、私はこんなスマートなお財布っていいなぁと思います。
あ、ちなみに、小銭入れのついていないお財布は、「純札」(これも業界用語?)って言うんですって。
そのスマートなお財布。
革を使ったアイテムだし、物を収納するわけだし、ずっとバッグと近い物だと思っていて、革が扱えるようになったら両方作れるかな。って思っていたんですよ。
それである日、バッグの革の残りでお揃いのお財布を作ろうとしたら、
「が~~~ん 全然きれいにまとまらない・・・」
もう、作ってる途中でこれじゃダメってわかりました。
何段にもなったカードポケットや、
蛇腹に開くマチ、
小銭入れや仕切りがあって、
後ろ側やかぶせの裏にもポケットがある。
そんなお財布を、薄くきれいに仕上げるには、秘密がたくさんあるんだなぁってしみじみと悟ったのでした。
それから、お財布を作って欲しいと言って下さる方がいても、「お財布はバッグとはちがうので難しくて・・・」としか言えなくて、
でも、本当はバッグもお財布も両方作れるようになりたいし、蛇腹に開くマチがいくつもあって、その中にファスナーポケットや仕切りのあるクラッチバッグだって作りたい!
だったら、挑戦してみるしかないでしょう?
挑戦して、たくさん作って、作れるようになるしかない。
「何かを始めるのに遅すぎるという事はない」
はず。
という訳で、去年から、革小物とお財布に気合を入れて挑戦しています。
たくさんのポケットや蛇腹に開くマチなど、すっきり作るために必要なのは正確さと薄さ。真剣に向き合ってよーくわかったのが、寸法が少しでも狂うとゆがんで出来上がるという事。型紙も裁断も正確さが命なんですね。しかも小さいのに、「正確にやってね!」と訴えてくるパーツはこんなにも多い!
もちろんバッグも正確なのは大切ですよ。正確に作ってあるバッグは仕上りがが全く違いますよね。ただ、0.5mmのずれで大事な顔が顕著にゆがんでしまう事はないかなぁ。バッグはまた違う難しさがありますけれど。
あぁ、1mmがこんなにも大きいとは、今までの人生では全く気づいていませんでした~
そして、薄さに挑戦しなくてはいけないのは「革漉き」。
難関です。
たくさん作る(量産する)方は、プロの革漉き屋さんに指定の薄さにしてもらえるので何の心配もないのですが、私のように1つだけ作るなら、自分で革漉き機の刃を研いで、研いで、研いで、慎重に革を漉いて、薄~く出来る技を磨かなくては。
たとえば、この0・35mmの薄さに漉いた革を使うのは、
この、折れ曲がるマチの部分。
革が、紙のようにペラッペラです((笑))
革を紙の薄さにしようと思うと、漉きのちょっとした加減であっという間に穴が空いてしまうので、手に汗を握るスリルとサスペンス・・・・ホントですよ。((^^ゞ)
忘れちゃいけない。ボンドを塗るのも、常に薄く、きれいに、均一に。
そして塗った後、貼りあわせる時も細心の注意です。お財布の形がきれいに仕上がるよう丁寧に押さえると、出来上がりが全然違って来るのはなぜでしょう?
小さいから?
こうして、自分でう~っとりするくらいに気持ちを込めて作って、ようやく普通の仕上がりに見えるのだとわかりました。
でも、それはどんな事でもそうですよね。
小さな事を、丁寧に積み上げるから美しいものが出来る。
物を作る事だけじゃなくて、スポーツも、楽器の演奏も、毎日過ごす時間や暮らし、人とのつながりだってそう。
シンプルな事、だけど実は難しい。
そして、何を丁寧に積み上げられるかは人それぞれ、みんな違っていて、私が出来るのはこうして作る事かなぁと思うと、大切にしなくては!と改めて感じるお財布制作の日々です。
小さな事を丁寧に積み上げて作るお財布と革小物。
いつか、あなたのお財布も作らせていただけたらうれしいです。
小さな丁寧を積み上げて、ぜひ作らせてくださいね。
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