STORY2 「らしさ」に誇りを持って生きる人を増やしたい
秘められた魅力を探して
はじめてのブランディングの仕事は、友人のデザイナーさんでした。
この仕事をやっていこうと心に決めた最大の理由は、実はこの時の印象深い経験にあります。
それは、彼女の中に眠っている本質的な価値を一緒に探していく過程で、彼女がどんどん変化し、輝きを増していく様子を目の当たりにしたことでした。
デザイナーである彼女は、ビジュアルで表現することが得意な反面、言葉で伝えることは苦手で、
「作品の価値は、見てもらえば伝わるだろう」「わかる人にだけわかってもらえれば、それでいい」
と思っていました。
そんな彼女をブランディングすることになった私は、「彼女の魅力を余すところなく言語化して、世界中に知らせたい」という思いで、たくさんの質問をしていきました。
でも、彼女からは、なかなか言葉が出てきません。
私は、彼女の言葉だけではなく、話し方や表情、ちょっとしたしぐさから、彼女の心の声に耳を澄ませ、それを理解しようと集中力を高めました。そして、私の思い描いた世界が真実なのかどうか、折に触れて確認しながら、彼女の歩んできた軌跡に点在する「キラリと輝くもの」を拾い集めていきました。
彼女と対話しているその時間は、まるで一緒に宝物を探しながら、旅をしているような感覚。
それは私にとって表現しがたいほど幸福な時間でした。
思いを伝えられなかった過去があるからこそ
なぜ、彼女の話を聴くことがそんなに楽しく幸せなことだったのか?
その理由は、私の幼少期にありました。
真面目で厳しい母にダメ出しされ続けて育った私は、「自分の意見は誰にも受け入れてもらえない」という思い込みから、言いたいことが言えない子供でした。そのせいで人にわかってもらえず、辛い思いをしてきたので、
「目の前の人には、過去の自分のような悲しみを絶対に味わってほしくない」
という気持ちがとても強く、言葉にならない思いを感じようと無意識に神経を研ぎ澄ませてしまうのです。
しかしそのおかげで、言葉が少ない彼女の思いを息を吸うように感じ取り、彼女が秘めている魅力を夢中で探し出すことができたのでした。
そして、見つかった彼女らしさを丁寧に言語化していくと、彼女がなぜ、何のためにデザインの仕事をしているのか、その原点に辿り着くことができたのです。
言葉の力で望む未来が現実に
心の底にある本当に大切にしたいこと。「価値観」が言語化されることで、彼女はどんどん変わっていきました。
心からやりたいことが明確になり、仕事への向き合い方が変わりました。
言葉で伝えることの大切さにも気づき、仕事への思いや作品の魅力を積極的に伝えるようになったのです。
お客様に自信を持ってプレゼンテーションできるようになった結果、彼女の作品の魅力は輝きを増し、より多くの人に伝わるようになりました。
そして、大切なお客様に、今まで以上に満足していただけたり、ホームページからのオファーも増えたり、彼女の望んでいた未来が現実になっていったのです。
「らしさ」を最高の価値にして伝えたい
ブランディングは、多くの人にとって集客の手段だというイメージが強いのですが、大切なことは、なぜそのビジネスをやるのか存在意義を明確にし、本人や企業がぶれずに「ブランド」としての誇りを持って自走できるようにすること。
正に彼女はそこに辿り着き、輝きを増しながら次のステージへと進んでいったのです。
「人って……なんて魅力的な存在なんだろう」
彼女の様子を目の当たりにして、私はこの仕事に心からやりがいを感じたのです。
「人や企業が持つ『らしさ』という唯一無二の宝物を、ありきたりな言葉ではなく人の心に届く言葉にし、最高の価値として世に伝えたい」「ブランディングの力で、秘めた可能性に光を当て、一緒に新しい未来を創っていきたい」
そんな思いが強くなり、私はブランドコアプロデューサーとして活動するようになりました。
「その人らしさを最高の価値にする」
この仕事に携わることができ、私は今、心から幸せを感じています。